うちの父は、今年で87歳になります。
昭和一桁生まれの頑固一徹。
現役時代は工場勤務、週末は農業で生きてきた人です。
今も、不定的的ですが畑に出て農作業をしています。
「体が動くうちは、土を触っとらんと調子が出ん」と言って、
家の近くの畑はもちろん、山の上にある少し離れた畑にも通っています。
正直、87歳にしては本当に元気です。腰も曲がってないし、手つきも器用。
野菜の苗を植えるスピードも早い。
私の方が先にバテるくらいです。
でも、気になっているのが運転のこと。
父は今でも軽トラを運転して畑に行っています。
山道や細い農道を慣れた手つきで運転する姿を見ると、
「さすが、まだ大丈夫かな」と思う一方で、
ふと不安になることもあります。
最近、テレビやネットで高齢者の交通事故のニュースをよく目にします。
「アクセルとブレーキを踏み間違えた」
「信号無視で交差点に突っ込んだ」
「高速道路を逆走」――どれも他人事ではない気がしてきました。
うちの地域も高齢者が多いですが、
やっぱり事故があると話題になりますし、
「そろそろ返納を考えなきゃね」と言い合う声も聞こえてきます。
でも、田舎に住んでいると、車が生活の一部なんです。
バスは一日に数本しか来ないし、タクシーはすぐに呼べない。
最寄りのスーパーまで車で20分。病院に行くのも車が必要。
ましてや、山の上の畑なんて車がなければ絶対に行けない場所です。
もし免許を返納したら、父の生活は大きく変わります。
買い物や病院は家族が送迎できても、
毎日の農作業まで付き添うのは正直厳しい。
何より、畑仕事が父の生きがいであり、心の支えになっているのを知っているから、
それを取り上げるようなことはしたくない。
けど、一方で、万が一の事故を考えると怖くなります。
父がケガをするのも、誰かを巻き込んでしまうのも、どちらも避けたい。
「そろそろ車のこと、考えようか」と声をかけたことがあります。
でも父は「わしはまだ大丈夫じゃ」と一蹴。
「事故を起こしたら責任取れないよ」と言っても、
「事故なんて若いやつだって起こす」と返されてしまいます。
たしかにそれも一理ある。だけど、高齢者というだけでリスクが上がるのも事実。
ここが今、家族にとって一番の悩みです。
じゃあどうするか。
いま、いくつかの可能性を探っているところです。
たとえば、週に何日かは家族で送迎する日を作る。
地域の移動支援サービスや福祉タクシーを調べてみる。
近くに住む親戚に協力をお願いする。
軽トラの代わりに電動カートのような移動手段を用意できないかも検討しています。
もちろん、最終的には父本人が納得しないといけない。
無理やり返納させても、気持ちがついてこないと逆にストレスになります。
だから今は、父の「生きがい」と「安全」のバランスをどう取るか、
家族みんなで話し合っている最中です。
同じような悩みを持っている方、たくさんいらっしゃると思います。
親が元気でいてくれることは本当にありがたいこと。
だからこそ、どう守っていくか、どう支えていくか――
答えは簡単じゃないけれど、考え続けていこうと思います。
