BS NHKで放送されていたドキュメンタリー「妻亡きあとに ―近藤正臣 郡上八幡ひとり暮らし―」を観ました。
俳優・近藤正臣さんといえば、若い頃から数々のドラマや映画で活躍されてきた名優。どこか凛とした佇まいと、柔らかい物腰の裏に芯のある演技が印象的で、私自身も昔からとても好きな俳優さんのひとりです。
そんな近藤さんが、最愛の奥様を亡くし、岐阜の郡上八幡という町でひとり暮らしをされている姿を追ったこの番組。
タイトルだけを見たときは、正直ちょっと切なくて、重い内容かなと身構えてしまったんですが、実際に観てみると全然違いました。
むしろ、静かで優しく、そして深く考えさせられる、本当に素晴らしいドキュメンタリーでした。
番組では、郡上八幡の自然豊かな風景とともに、近藤さんの現在の暮らしぶりが丁寧に描かれていました。
畑の世話をしたり、猫たちと穏やかに過ごす時間。地元の方々とのゆるやかな交流の様子。
そしてなんと、野生のサルのために柿の実を切らずに残しているというエピソードまで…!
その行動一つひとつに、優しさとユーモア、そして“人としての器の大きさ”のようなものを感じました。
印象的だったのは、ただ日々を過ごすだけではなく、“これから”をちゃんと見据えて生きようとされていること。
80代という年齢で、「今さら」ではなく「今だからこそ」できることを、自然体でやっている近藤さんの姿は本当にかっこよかった。
猫とのふれあいや、地元の人々との笑い交じりの会話、散歩途中にふと見上げる空の広さ。そういった何気ないシーンの一つひとつに、人生の豊かさが詰まっていました。
そしてその中には、奥様と過ごした日々への想いも静かに息づいていて、それがまた胸を打つんです。
「老い」と「孤独」という言葉には、どうしてもネガティブなイメージがつきまとうけれど、近藤さんの姿からは、それをどう受け入れ、どう向き合うかによって、その時間はむしろ“自由”で“味わい深いもの”になりうる、というメッセージが伝わってきました。
私はまだそこまで年齢を重ねていませんが、それでもこの番組を観て、「自分の老後」や「人生の最後の時間」をちょっと真剣に考えるきっかけになりました。
そして何より、「どう生きるか」に年齢は関係ないんだと改めて気づかされました。
俳優・近藤正臣としての顔ももちろん素敵ですが、今回のドキュメンタリーでは、それを超えた「一人の人間」としての魅力が存分に映し出されていて、より一層ファンになってしまいました。
こんなにも丁寧に“生きる”ことを見せてくれる番組って、なかなかないと思います。
再放送があれば、ぜひまた観たいし、多くの人に観てもらいたい。心からそう思える一本でした。
