うちの女房が最近、パン屋さんでパートを始めました。
いわゆるチェーンのベーカリー。接客もレジも、前に飲食店で働いていたことがあるので問題なし。
そっちはむしろベテランです。

でもここ数日、なんか浮かない顔をして帰ってくる。
理由を聞いたら、「私、パソコン使えないおばさんって思われてる気がして辛い…」とポツリ。
話を詳しく聞くと、そのお店では毎日、売上とちょっとした連絡事項をメールで送る決まりがあるらしく、たまたまその送信先が、なんと自分の娘と同じぐらいのパートの女子大生。
で、その子から言われたそうです。「昨日のメールをコピペでいいので、毎日送ってくださいね〜」って、軽く。
悪気があったわけじゃないと思う。でも、女房にはその「コピペでいいので」って一言がかなり効いたらしい。
実際問題、その“コピペ”ができなかったんです。
女房、人生でほとんどパソコンを触ったことがありません。
スマホはLINEや写真のやり取りくらいはするけど、パソコンとなると、もう未知の領域。
右クリック?左クリック?反転って何?って状態。
そもそも「コピペ」って言葉自体が、なんかこう、違う言語に聞こえるらしいです。
「“コピペ”って、何をコピーしてどこに貼るの?って感じよ」と苦笑いしてました。
見かねて、うちのパソコンでメールのコピペの仕方を教えました。手取り足取り、クリックの場所、文字の選び方、コピー、貼り付け…でも、やっぱりどこかで止まってしまう。
うまくできない自分にちょっとイラつきながらも、「やりたいのにできない」っていう情けなさで、途中でふて寝しそうになってました。
見てるこっちはちょっと切なかった。
でも、思ったんですよね。こういう「パソコン使えないおばさん」って、実はけっこういるんじゃないかって。
スマホ世代と違って、パソコンに触れる機会がないまま家庭や仕事をやってきた人にとっては、いきなり「メールでコピペ」は高いハードル。
本人の努力不足とかじゃなくて、環境やタイミングの問題なだけ。
できないことを「できない」って言えるのも立派なことだし、覚えようとしてる女房を見てると、やっぱりすごいなって思う。
ちなみに昨日は、「ついにコピペ成功した!」と自慢げに報告してくれました。メール1通でこれだけ達成感あるのも、ある意味すごい。
世の中には、マウスの持ち方から始める人もいる。そういう人が少しずつ「できる」ようになる瞬間って、地味だけど尊いなと思った日でした。
